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接触した物の温度と接触時間によって
火傷の深さが変わります

火傷の原因として多く見られるのが、ポットに入った熱湯や炊飯器の蒸気、みそ汁、天ぷら油、ヘアーアイロン、花火、ファンヒーターや遠赤外線のストーブの近くで寝ること、湯たんぽやカイロによる低温火傷などがあります。
湯たんぽやカイロなど比較的温度が低いものでも、長時間接触すると深達性の熱傷になることがあるので、使用方法を守って使用しましょう。
特に小さいお子さんの炊飯器の蒸気による火傷は、火傷が深くなる傾向があり、手術が必要となることもあります。
小さなお子さんのいるご家庭では、ポットや炊飯器など火傷する可能性があるものは、お子さんの手の届かないところに置きましょう。
万一、火傷してしまった場合は速やかに受診しましょう。

Feature 熱傷の特徴

火傷とは

皮膚が熱湯や火炎、高温の物体に接触することにより、熱変性を受けた状態を言い、深さの程度により、1度熱傷、2度熱傷、3度熱傷に分類されます。

  • 1度熱傷は、皮膚が赤くなり痛みを伴うこともありますが、大半の場合は1週間以内に跡を残さず治ります。
  • 2度熱傷は、水ぶくれができるのが特徴で、2週間程度で皮膚が再生する「浅達性2度熱傷(SDB)」と3~4週間かかる「深達性2度熱傷(DDB)」に分けられます。
  • 3度熱傷は、皮膚の損傷が全層に達している状態で、皮膚は黄色や黒色になって壊死(えし)し、皮膚潰瘍をつくります。

また、2度熱傷の場合、火傷直後に受診しても損傷の深さが正確に診断できないことがあります。
その場合は1週間程度かけて経過を慎重に見ながら判断します。

ただし、2度熱傷だからと言って油断は禁物です。稀に深達性2度熱傷で感染症を起こすと3度熱傷に移行することもあり、注意が必要です。
また、顔面から頸部、手などの関節部に生じた深達性2度熱傷以上の火傷は瘢痕拘縮(ひきつれ)などを起こすことがあるため、手術をお勧めする場合もあります。

やけどの応急処置

やけどは直後の不適切な処置が原因で、治療が長引いたり傷跡が残ってしまうことがあるので注意が必要です。やけどをしたら、まず患部を流水で10分~15分程しっかり冷やすことが大切です。痛みが治まってきたら患部をガーゼや清潔なタオルなどで保護し、保冷剤などで冷やします。もし水ぶくれができている場合は、なるべく水ぶくれを破らないようにします。衣服を脱げない場合は衣服の上から冷やしましょう。
やけどの範囲が広範囲である場合や赤ちゃんなどでは、冷やしすぎると逆に低体温症になる可能性があるため、患部を保冷材などで冷やす程度で構いません。応急処置をしたら自己判断せず、なるべく早めに病院で診察を受けるようにしましょう。

やけど(火傷)の診断

やけどは、やけどの深さとやけどの範囲(BI;Burn index)を総合して診断されます。広範囲に及ぶ深いやけどの場合は生命に係わることもあります。一般的に、やけどの重症度の判定の基準として、熱傷予後指数(PBI; Prognostic burn index)が使われます。「熱傷予後指数+年齢」の値が70以下の場合は生存の可能性が高く、100以上の場合は生存が難しいレベルのやけどであるとされます。

また、入院治療の目安は、体表面積に占める2度熱傷の割合で判断されます。体表面積の15%以上が2度熱傷の場合、一般病院に入院して治療を受けることが必要とされ、30%以上が2度熱傷の場合は、救命救急医および熱傷または形成外科専門医の常駐する総合病院での治療が必要とされています。一般的に、やけどの面積を算出する簡単な方法として、手のひら1枚が体表面積の1%であることを目安とする「手掌法(しゅしょうほう)」がよく用いられます。

1度熱傷

皮膚の表皮のみに損傷を与え、赤みや痛みがありますが、水ぶくれはできません。治療を必要とせず、自然治癒することもありますが、炎症範囲が広かったり痛みが強い場合は、医師による診察を受けた方が良いでしょう。

2度熱傷

皮膚の真皮まで損傷を与え、赤みや痛みに加えて水ぶくれができます。損傷の深さにより、さらに2度浅達性熱傷(SDB)と2度深達性熱傷(DDB)に分類されます。

  • 2度浅達性熱傷(SDB)・・・真皮の浅い部分までの損傷。水ぶくれの下がピンク色になっており、針で刺すと痛いのが特徴。
  • 2度深達性熱傷(DDB)・・・真皮の深い部分まで達する損傷。水ぶくれが白く、針で刺しても痛くないのが特徴。

2度浅達性熱傷と2度深達性熱傷は見分けるのが難しいため、治療を行いながら深度を見分けていきます。

3度熱傷

皮膚の全層に損傷が達していますが、感覚が失われており痛みはありません。水ぶくれはできず、皮膚は黄色や黒色に変色します。治癒までには時間がかかり、傷跡が残ったり、皮膚が盛り上がったり、皮膚が引っ張られるような感覚が残ることがあります。

やけど(火傷)の治療

1度熱傷

皮膚の赤みや痛みなどの炎症を抑えるために、ステロイド軟膏を使用します。通常、やけどの跡は残らず、1~2週間程度できれいに治ります。症状が軽微であれば、治療をしなくても数日で自然治癒することもあります。

2度熱傷(SDB)

基本的にやけどでできた水ぶくれは破らずに温存し、内用液が自然に体内に吸収され無くなるのを待ちます。大きな水ぶくれができた場合は、感染症を防ぐため、注射針で穴を開けて内用液を出すこともあります。治療には皮膚の炎症を抑えるためのステロイド軟膏と感染症を防ぐために抗生剤入りの軟膏を使用します。軟膏は患部にたっぷりと塗り、上からガーゼで覆って保護します。通常2度浅達性熱傷は、2週間程度できれいに治りますが、2度深達性熱傷は治療が2週間以上かかり、やけどの跡が残る場合もあります。

3度熱傷(DDB)

3度熱傷では皮膚の一部の細胞や組織が死んでいる状態(壊死)となっています。やけどは壊死層が残っていると治りにくく、感染症のリスクも高まります。壊死層が薄い場合は軟膏のみで治る場合もありますが、壊死層が厚い場合は壊死層を溶かす軟膏を塗ったり壊死層を手術で除去する必要があります。深いやけどの場合は抗菌剤や鎮痛剤、胃薬などを内服しながら治療を行います。また、やけどの範囲が広くなかなか症状が治まらない場合は植皮手術することもあります。

やけど治療上の注意点

軟膏を塗る際は患部にたっぷりと塗り、ガーゼで覆って保護しましょう。
軟膏の量が少ないと患部にガーゼが張り付いてしまうことがあります。ガーゼが張り付いた場合はガーゼに消毒液をヒタヒタになるまで含ませ、患部を傷めないようにゆっくりと剥がします。

2度以上のやけどでは傷跡に痒みが出たり、赤く盛り上がったり、ひきつれたりすることがよくあります。その際は状況に応じて適切な治療を行いますので、予めご了承ください。